乳がん

摘要

犬の乳腺腫瘍の約半数は悪性の乳がんであり，その治療の柱は外科的切除である。犬の乳がんの組織像は多 彩かつ複雑であるが，その多くは手術のみで治癒する低悪性度（良性との境界）のがんである。このタイプに は,浸潤,転移をともなわない管状癌,複合癌,混合腫瘍内癌などが含まれる。一方，リンパ管浸潤やリンパ節転移をともなう高悪性度の乳がんは,術後に再発,転移する可能性が高い。こ のタイプには面皰癌,充実癌，退形成癌,癌肉腫などが含まれるが浸潤,転移する前の初期病巣であれば治癒 する見込みもある。よって各症例の予後は病名のみでなく，組織学的なグレードや浸潤度,臨床ステージから総 合的に判定すベきである '臨床的な炎症徴候(発赤,潰瘍,硬結,疼痛）をともなう炎症性乳がんは予後が悪く， 根治は望めない卜。