小児がん経験者のAYA世代以降の腎障害進展リスクと課題

摘要

小児がんの治療成績向上に伴い,小児がんのサバイバー(以下「小児がん経験者」)は増加の一途をたどっている.小児がん経験者においては,急性期には原疾患と抗がん治療に伴う腎毒性の晩期合併症のリスクを抱え,遠隔期は加齢の影響により腎機能は低下する.腎機能障害は「糸球体濾過量の低下」「尿細管障害」「タンパク尿」「高血圧」「その他」に分類されるが，多くは複合した病態を呈する.Onco-nephrologyはoncology(腫瘍学)とnephrology(腎臓学)の2つの領域を組み合わせた造語であり，主に腎臓の手術や,抗がん剤,放射線治療,造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation ； HSCT),抗生剤や免疫抑制剤などさまざまながん集学的治療の結果によって生じる，急性腎障害(acute kidney injury ； AKI)や慢性腎臓病(chronic kidney disease ；CKD)を中心として扱う,近年は分子標的薬やCAR-T療法をはじめ免疫細胞療法など新規の治療法も開発され，小児がん経験者における腎障害は複雑化し,そのケアの重要性はますます高まっている.本稿においては，AYA世代以降特に顕在化する腎合併症のリスクと課題について概説する.