CKD診療におけるアドバンス?ケア?プランニング(ACP)

摘要

慢性腎臓病(CKD)は代表的な慢性疾患であり,その患者数は,生活習慣の変化,医療技術の発展,高齢化の進行に伴い世界的に増加している.CKDは末期腎不全や心血管疾患のリスクが高く,国民の健康を脅かしている.CKD患者の増加に伴い，本邦における維持透析患者数は増加の一途をたどり，約34万人に上る.高齢腎臓病患者は循環器疾患,脳血管障害，認知機能障害，フレイルなどの合併症を有することが通例であり,悪性腫瘍合併率も増加する.末期腎不全に至ると腎代替療法を必要とするが，本邦では,90%以上において血液透析が選択されている.高齢腎不全患者の場合,循環器系合併症のため,体外循環が大きな負荷となり,導入困難，透析見合わせを余儀なくされる場合も少なくない.また,透析センターへの通院自体が高齢患者,家族，介護者に対して大きな負荷である.後期高齢者では，終末期医療?ケアの一環として透析導入/見合わせを捉える必要がある.末期腎不全に際して生命維持のために,透析療法が必須であることは自明である.しかしながら，各種合併症を有する高齢患者において,透析導入による日常生活動作(ADL),生活の質(QOL),入院期間を含めた包括的な予後を予測することは困難である.腎不全が進行し，深刻な病状に陥った際には苦痛症状や認識力が低下しており，意思決定ができないことも多い.そのため，将来を見据えた自らの治療のゴールや希望を事前に明らかにしておくアドバンス?ケア?プラ ンニング(advance care planning ;以下ACP)が注目されている.本稿では，CKD診療におけるACPについて,その重要性,克服すべき課題について概説する.