フトアゴヒゲ卜カゲ(Pomona viticeps)の 粘液性黒色素胞腫の1例

摘要

フトアゴヒゲトカゲ(JPogona vitticeps)，5歳齢,雌，体重 519g(図1)。背部皮膚に腫瘤性病変が形成されたことを主訴に来院し た。本症例は3力月齢時から当院で健康診断や飼育指導など を行っており，飼育管理や食事に関しては適切であった。病変 は1年ほど前から存在しており，最近になって徐々に増大傾 向にあるとのことだった。一般身体検査では，左側の背部皮膚 に7 x 7mmの腫瘤性病変が認められた。病変は硬結感があ り，底部固着性は認められず，表面は潰瘍が生じていた（図 2)。肉眼所見から膿瘍が鑑別診断に挙げられたため，25G針 を用いて病変部に微少な切開を加えたが排膿は認められな かった。次に，切開部からの押捺検体および細針吸引検体によ る細胞学的検査を行った。検体には多量のへテロフイルが認 められたが，あきらかな感染性病原体は認められなかった。そ のほかに黒茶色の細胞質内色素をもつ孤立性の紡錘形細胞を ごくわずかに認めた。この細胞は黒色素胞であると考えられ たが，その細胞密度は低く異型性に乏しいため，診断的ではなかった。