腹膜評価における腹腔鏡検査

摘要

腹膜透析(peritoneal dialysis ； PD)を安全に 継続する上で,被囊性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis ； EPS)へと進展しうる腹膜 傷害の有無を見極めることはきわめて重要であ る.PD継続に伴う生理的な腹膜の経年変化な のか,EPSへの進展を予防するためにPDを中止 すべき腹膜の変化(腹膜傷害)が起こっているの かを判断しなくてはならない.今世紀初頭から始 まったPD液の改良(生体適合性の改善)により, 酸性PD液時代のような重篤な腹膜傷害例は減 少しているため,腹膜平衡試験(PET), PD排液 中脱落中皮細胞の形態評価やサロゲートマーカー (炎症?線維化関連分子)の測定,腹膜病理組織 検査などでは,腹膜傷害の程度を十分に捉えきれ なくなってきている.これら従来の指標の臨床的有用性が以前に比 較して低下していると言わざるを得ない状況の 中,特に臓側腹膜の病変について早期かつ確実 に腹膜劣化を判定する手法が求められている. 現在，本邦の一部の施設では腹腔鏡による腹膜 観察が行われており,EPSの病態に関連すると想 定される腹膜血管系の変化,腸管癒着，被囊形成 などを明瞭に捉えることができ，従来の指標では 同定不能な腹膜傷害の観察が可能であることが 示されている.