妊孕性温存と乳がん 治療医ができること

摘要

がん?生殖医療について:日本人女性の乳がん罹患数は年間約93,000人 を超えると推定され,その発症数は30歳代後 半から急増する.20歳代から40歳前後までは挙 児可能年齢に相当し，乳がん経験者が治療後に 妊娠を希望する場合も多い.一方で抗がん薬治 療や長期間の術後内分泌療法による卵巣機能低 下により自然妊娠が望めない場合もあることか ら，生殖補助医療を用いた妊孕性温存療法を検 討する必要がある.また,挙児希望の有無が術後内分泌療法の拒 否や中断との相関関係があることも報告されている, 十分な説明?意思決定支援をもとに乳が ん治療を選択することは,がん治療の完遂率を高 め予後を改善する可能性があること,また妊孕性 温存を選択しない患者のQOLを改善する可能性 も報告されている.乳がん治療を開始する前 に,患者の挙児希望を確認し対処をしておくこと が,ゆくゆくは患者の身体的,精神的，社会的豊 かさをもたらすことにつながる.