Gene Awareness

摘要

日本における遺伝性腫瘍の 診療の発展:PARP阻害薬であるオラパリブが乳がん,卵巣 がんに対する治療薬として，そのコンパニオン診 断としてのBRACAnalysis?診断システムが保険 承認されて以降，日本における遺伝性腫瘍診療は 目覚ましい発展を遂げている.がんと遺伝子の関係性については一般的にも 知られており,特に家族歴がある場合は『自身が がんを発症したことは遺伝性なのか』と気にさ れるがん患者は多数見られた.かつて自費で診 療が行われていた時代は,遺伝性腫瘍について 説明をするも,遺伝学的検査が自費である事や 血縁者への影響などを気にされるなど,さまざま な理由から遺伝学的検査の実施に踏み切れない ケースは少なくなかった.その状況に変化をも たらしたのはPARP阻害薬のコンパニオン診断と してのBRACAnalysis?診断システムと考える. BRACAnalysis?診断システムは2018年より切除 不能?転移再発乳がん症例を対象にコンパニオン 検査として適応が開始された.『治療薬の選択肢 が増えるのであれば』と患者にとっては新たな動 機付けがなされるようになった.さらには2019年 にがん遺伝子パネル検査の保険適応が始まり,日 本においてもがんゲノム医療が広く普及し,さま ざまながん種においてがんと遺伝子の関連につい て着目されるようになってきた.また,遺伝性乳 がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer syndrome ； HBOC)の代表的な原因遺伝子と される BRCA1/2 だけでなく,MSI (microsatellite instability)検査を行うことにより，大腸がんや子 宮体がんなどの原因となりうるLynch症候群につ いても診断されるケースが増えている.