脂肪酸代謝物のマルチカラーイメージング

摘要

細胞内に取り込まれた脂肪酸は、連鎖的な酵素反応によって代謝され、リン脂質合成ゃエネルギー産生に利用される。脂肪酸の代謝は、生命維持活動の根幹を担っていることに加え、脂肪酸の代謝過程の異常が肥満や糖尿病、がんなど多くの疾病と深く関与している。蛍光標識した脂肪酸を用いたイメージングは、脂肪酸代謝を直接観察することができる強力な技術である。最近筆者らは、周囲の極性環境に応じて異なる蛍光特性を示す「環境応答性」をもった蛍光色素としてアザピレンに着目し、これを連結した蛍光性脂肪酸AP-C12を開発した。AP-C12は、天然脂肪酸と類似の代謝過程を経て様々なオルガネラに分布され、代謝先の極性環境に対応した蛍光応答を示す。これを用いることで、栄養飢餓状態のHepG2細胞において、脂肪滴の分解はリポファジー(脂肪滴を含むオートファジー)よりもリポリシス(リパーゼによる脂肪加水分解)が支配的であることを明らかにした。