術中瞳孔マネージメント（小瞳孔への対策,瞳孔整復）

摘要

白内障手術を安全に施行するためには,水晶体,眼内レンズの前面に位置する虹彩を適切にマネージメントし,瞳 孔を拡張し，術野を十分に確保することが重要である.瞳孔拡張法は，虹彩後癒着を解除したのちに眼粘弾剤を使用 する方法，瞳孔括約筋を切開する方法，虹彩拡張リングや虹彩リトラクターにて拡張する方法があり，場に応じて使 い分ける必要がある.また，外傷，手術などによって虹彩の欠損や不可逆性の散瞳などの瞳孔不整が残存すると，羞 明,グレア，ハロー，近見障害，又差の増強，単眼複視，整容面などさまざまな弊害が生じ得るため,虹彩縫合にて 瞳孔を縫縮することも有用である.白内障手術において，水晶体,眼内レンズの前面に位 置する虹彩を適切にマネージメントし，手術を安全に遂 行したのちに最適な瞳孔に形成していくことは，術後の 視機能の向上に欠かせない要因であると考える.術者の技量にも影響されるが,一般的には安全な手術 を施行するには，ある程度の瞳孔径を確保する必要があ り，極度の小瞳孔であれば，瞳孔を拡張する手技を行う のが通例であろう.しかし，無理な瞳孔拡張操作は,虹 彩出血,術後炎症の増加，瞳孔不整，不可逆的な散瞳な どの合併症を生じる危険もある.また，外傷，手術，先 天性疾患などによって虹彩の欠損や不可逆性の散瞳など の瞳孔不整が残存すると，羞明,グレア，ハロー,近見 障害，収差の増強,単眼複視,整容面などさまざまな弊 害が生じ得る.その場合，たとえ視力が良好であって も，患者の満足度は低下する可能性があり,術後の見え 方に影響を及ぼすこともある.