症例呈示:眼内レンズ支持部の前房脱出および麻痺性散瞳を認めた症例

摘要

［症例］:84歳,男性.既往歴:特記すべきことなし.現病歴:2022年1月に近医で両眼の水晶体再建術を 受けた.左眼手術時,超音波中に後囊破損し囊外摘出術 に術式変更された.眼内レンズ(intraocular lens : IOL) (NX-60, +22.0D,参天製薬)を囊外固定したが 術中前房出血をきたしたため,手術続行不可能となり閉 創し手術を終了した.術後前房出血と虹彩炎,角膜浮腫 を認めたためベタメタゾン点眼，トリアムシノロンアセ トニドTenon囊下注射し，徐々に出血は改善したが， 視力不良と上方視野のかすみ,まぶしさが改善しないた め,4月に当院を紹介受診した.初診時所見:右眼視力0.1xIOL (0.9xIOLx +0.75D cyl-2.0D Ax100°),左眼視力0.2xIOL (0.3xIOLx -1.25D cyl-2.0D Ax10°),右眼眼圧 10mmHg,左眼 眼圧17.5mmHg,左眼は麻痺性散瞳を認め，IOLの支 持部が下方虹彩上に脱出し(図1a), IOLは上方に偏位 していた(図1b).左眼の角膜内皮細胞数は1,942cells/ mm~2,前房内フレア値27.8 pc/ms,眼軸長23.13mm, 眼底に異常所見は認めなかった.再手術の希望があったため，左眼IOL位置の整復，および瞳孔整復目的に手 術を施行した.