美と醜。ボーダーを壊す平和なメッセンジャー

摘要

高橋盾のアトリエは、面白い。一日中見ていても全然飽きない。 今まで、デザイナーの仕事場を見て羨ましいなんて思ったことは一度もないのだが（ほとんどのデザイナーの部屋は殺風景）、高橋の仕事部屋には素直に憧れてしまう。ダイナミックな建物の素晴らしさは勿論の事で、そんなものよりも私の目を釘付けにしたのは大きな壁に飾られたモノたちだった。 様々各種類のドクロの絵、反戦メッセージのポスター、マクドナルドのキャラクター、セックス・ピストルズのTシャツ、アメリカのコメディ映画「チーチ＆チョン」のインセンス、十字架にはバービーがはり付けの刑にされ、くまのぬいぐるみはピンで留められている。 そして、机にはFUCK THEDESIGN！ の大きな文字。 DJブースも、ドールハウスも、カラフルな象の貯金箱も、ビートルズ人形の顔にKISSの顔を縫いつけたぬいぐるみも、ピ　 ンボールゲーム機も、本物の人骨もある。 ジャンクなもの、ポップで可愛いもの、暴力的なものが渾然とミックスされたその部屋は「アンダーカバー」の世界そのものを見ているようだ。 不思議なことに、その空間からは“遊び場”といったゆるさは感じられない。ポップなものと病的なものがまぜこぜになって、妙に神聖な雰囲気に仕上がっているのだ。