ホップゲノムから栽培化の歴史を紐解く

摘要

人類は野生の動植物の選抜を繰り返し、作物や家畜が望ましい形質に変えられることを経験的に理解し、それを推し進めてきた。それは原始的だが広義の「育種」であり、我々が日々食するすべての作物は自然に自生していた野生種が高度に育種されてきたもの(栽培種)である。イネ、トウモロコシ、ジャガイモなどは病害抵抗性、わい化等、すなわち収量増大につながる重要な農業形質について選抜が繰り返され、現在では野生種とは形態も生理も大きく異なっている。このことはグーウインの自然選択に代わり、人の手による積極的な形質改変を推し進めていることにほかならない。この形質を人為的に改変できるという事実は作物の形質を司る遺伝基盤(ゲノム)というものは可塑性が高いことを表している。現在、70億人もの人々が地球上で暮らせるのもゲノムの可塑性によるところが大きい。