光エネルギーを利用してATPを生産し自分のパーツをつくる人工細胞

摘要

遺伝子や分子を組み合わせて生きた細胞を創る試みが今世界中で進められている。「人工細胞」や「合成細胞」と呼ばれるこの研究は合成生物学という学問分野を中心に進められ、近い将来バイオ産業における技術的な転換点となることが期待されている。これまでは転写翻訳系や遺伝子複製系など、いくつかの細胞機能をその部品となるタンパク質や補助因子などから再構築するにとどまつているが、これらを統合することで生きた細胞を組み立てることができるのではと考えられている。とても夢があって胸が熱くなる話ではある反面、本当にできるのか？と疑いたくなる突拍子もない話にも聞こえる。しかし2016年にJ.C. Venter Instituteから発表されたミニマル合成生物の論文では、473種類の遺伝子のみで生物が生きることができることが実証された。この中には機能未知な遺伝子も含まれるものの、生体部品としてこれだけそろえば生物を創ることができるということを示唆している。実際必要なタンパク質酵素をそろえることでタンパク質を人工的に合成することが可能であり、この反応はミクロンサイズの膜カプセル（べシクル）の中でも実行可能である。これがいわゆる人工細胞である。