歯周病菌感染がマクロファージにおけるアミロイドβの産生を引き起こす可能性

摘要

超高齢社会が進む我が国において、団塊世代が75歳になる2025年以後認知症が急増すると予測されている。認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病、AD)の脳内における病態の特徴としてAmyloidβ(Aβ)の蓄積した老人斑および神経原線維変化がある。優性遺伝アルツハイマー·ネットワーク(DIAN)が2012年に発表した研究報告によると、AD発症の25年前からAβが脳に蓄積し始め、その10年後から神経原線維が変化し、記憶をつかさどる海馬が縮小していく1)。この研究により、Aβの脳内蓄積がAD発症の引き金となる可能性を示す「アミロイドカスケード仮説」が支持されている。一方で、これまでAβは脳内で産生され、蓄積すると考えられてきたが、皮膚線維芽細胞、骨格筋細胞などによるAβ産生や、血液中のAβの脳への輸送についても報告されている2)。本稿では、Aβが歯周病菌に感染したマクロファージからつくられるという筆者らの新たな研究について概説する。