ファビピラビル創製から今日までをふり返って

摘要

ファビピラビル(商標名：アビガン)は、抗ウイルス活性を指標に富山化学工業㈱(現：富士フイルム富山化学㈱)において創製され、1998年に特許出願を行った化合物である。構造式を図示した通り、低分子(分子量：157)のピラジン母核化合物である。ファビピラビルの特徴は、とりこまれた細胞内で代謝酵素の働きによって糖三リン酸体に変換され、ウイルスの複製酵素であるRNAポリメラーゼを選択的に阻害してウイルスの増殖を直接阻止するとの作用機序を持ち、原理的に広く各種のRNAウイルスに対して活性を示す可能性を有している。また、この様な作用機序を持つ抗ウイルス剤で先行する薬剤はなく、既存の薬剤に対する耐性株に対しても効果を示すことが期待される。