ユニークな生合成機構を持つ新規リポペプチド系天然物の発見

摘要

微生物は多様な天然物を二次代謝産物として産生する。それらの一部はペニシリン、ストレプトマイシンをはじめとした抗生物質として開発され、感染症治療に多大な貢献をしてきた。しかしながら、現在でも、新型コロナウイルスの世界的な流行や、病院内感染における抗生物質耐性菌の出現など感染症に関する喫緊の課題に人類は直面しており、新たな感染症治療薬開発の必要に迫られている。天然物は医薬品候補化合物の供給源として以前から重要な化合物であったが、ゲノム時代を迎え、新たなアプローチを用いて新規天然物を発見することがより一層期待されている。今回紹介するゴードビオニン(goadvionin、GV)は、超長鎖脂肪酸ポリケタイド(PK)とペプチド化合物がハイブリッド化した新しい骨格構造を有するリポぺプチド系抗生物質であり、その生合成における縮合機構も従来知られていないユニークな様式であった。