犬の肥満細胞腫

摘要

正常な肥満細胞は，豊富な淡好塩基性細胞質および中心性 の円形核を有している。細胞質内には赤紫色の微細顆粒を豊 富に含んでおり，核の観察が困難なことがほとんどである。ま た，脱顆粒を起こした直後の肥満細胞では，細胞質は泡沫状を 呈している場合がある（図1)。細胞学的な分化度が高く ，悪 性度が低い(低グレードの)肥満細胞腫に関しては正常な肥満 細胞とほとんど同様の細胞形態を示している。豊富な細胞質 内顆粒を有し，比較的均一な核形態を示す肥満細胞が数個-数十個以上の肥満細胞が集塊（クラスタ一）を形成して塗抹されることが肥満細胞腫を疑う所見となる（図2 )。また，標本 中には炎症性サイトカインによつて腫瘍組織内に浸潤した好 酸球，コラーゲン壊死によって変性したコラ一ゲン線維が同 時に採取されることもある（図3)。炎症が強い病変では腫瘍 細胞が炎症にマスクされ，1度の細胞診検査では検出されな い場合があるため臨床的に肥満細胞腫が疑われる場合には可 能であれば細胞の採取方法や穿刺部位を変えて複数回の細胞 診検査の実施が推奨される（図4)。