犬の乳腺腫瘍 予後

摘要

犬の乳腺腫瘍は診療現場で 遭遇することの多い腫瘍の1 つであり,体表に発生することから早期発見の可能な腫瘍で ある。また，犬の乳腺腫瘍は悪性であっても，早期発見と適切 な治療により予後が良好である場合も少なくない。本稿では，犬の乳腺腫瘍の予後について概説する。犬の悪性乳腺腫瘍の予後を決定する因子に関して，近年さ まざまな報告がなされているが,予後との関連性がもっとも 一貫している因子は，腫瘍サイズ，リンパ節転移の有無,臨床 病期（ステージ）の3つである。また，紐織型や悪性度,核の分 化度,浸潤性，脈管内浸潤，ステロイドホルモンレセプター活 性なども予後因子として報告されている。予後因子に関与し ないものには，腫瘍の発生部位,数,術式（組織学的に完全切除 されている場合），手術時に卵巣子宮摘出術が行われているか どうかである。また，犬種による発生率についても議論がなさ れている。