“中毒疹”診断のロジックその② 一“中毒疹と診断しない”を目指して一

摘要

中毒疹と診断する場面は実臨床上実に多い.その理由は,一見して診断がっか ない発疹に対して利用可能な中毒疹という診断名が便利であるからに他ならない.しか し,中毒疹という診断名を多用している限りは,皮膚科医としての診断能力の向上はあり 得ない.一方で，中毒疹という診断名は，胸を張って経過中に診断名を改めていける暫定 的な診断名でもある.すなわち中毒疹患者を通じて自身の診断能力を高められるチャンス であるともいえる.中毒疹は主に原因不明に生じている紅斑に対して用いられるが,紅斑 は発疹のなかでも基本中の基本であり，あらゆる疾患で観察しうる.したがって，中毒疹 の鑑別疾患は極めて多岐にわたり，これらを的確に鑑別していくためには，高度な皮膚科 学的な知識が必要である.本稿では，極めて私見ではあるが，中毒疹と診断する際の発疹 の特徴 あるいは注意点について,筆者の経験をもとに記載していきたい.