同側眼に二度の外傷性眼球破裂をきたした1例

摘要

背景:外傷性眼球破裂は眼科緊急疾患のなかでもっとも予後の悪い疾患の一つであり,速やかな治療介入を要する.眼球破裂 では，創傷を受けやすい眼球部位があることは知られているが，縫合治療後の創傷部の強度に関してはよくわかっていない.今 回，同側に二度の外傷性眼球破裂を発症したが，二度目の創傷部が初回とは異なる部位であった症例を経験したため報告する. 症例:94歳，女性?2020年8月25日，転倒による右眼球破裂にて日本医科大学附属病院眼科を紹介受診.2018年にも転倒時 に右眼球破裂を起こし，他院にて強膜縫合術を受けた既往があった.同日,角膜?強膜縫合術を施行した.所見:鼻側角膜輪部 強膜に裂傷,一部ぶどう膜脱出を認めたが，前回破裂部位の耳側角膜強膜には10-0ナイロン糸で縫合が密に施されており，同 部位の眼球形態は保たれていた.今回の破裂部位に対して角膜?強膜縫合術を施行し，術後経過は良好であった.結論:外傷性 眼球破裂の既往がある眼球に,再度外傷による破裂を起こした症例を経験した.前回，破裂を生じた強膜部位は二度目の破裂時 には保たれており,縫合により強度が高められていると思われた.創傷部を適切に縫合することで外傷強度が向上することが示 唆された.