網膜疾患における人工知能の活用

摘要

ディープラーニング(深層学習)の技術の発展に伴って人工知能(artificial intelligence : AI)が世間を席巻するよ うになり,数年前から，医療分野のどの分野の学会においても必ずといっていいほどAIというキーワードがみられる.しかし,いわゆる“ブーム”とよばれるような状況はおおむね落ち着いて，着実に発展期を迎えつつあり，先端 的な研究者のみならず一般の医師にもかなり認知されるようになってきた.研究についても，2016年頃の，「AIを作ってみました」という単施設の研究から，多施設を組み入れることで「いかに広く使用することができるか」を複層的に確認する研究へと変わりつつある.しかし，研究レベルでは華々しい成果が披露されてきているが，実際に診療現場に導入されているものは少ない.また，研究レベルにおいても，データを十分に与えることで高い性能を達成可能であることはわかっているものの，種々の現実的な問題のため，真に革新的といえるものは出てきていない.本稿では，これまでの網膜関係のおもなAI論文の歴史を辿りつつ，AIの活用について考えていく.