希少がん1）軟部肉腫に対する免疫療法,分子標的治療薬

摘要

軟部肉腫とは非上皮性の悪性腫瘍であり,50種類以上の組織型がある多彩な疾患の集合体である.一般的に軟部肉腫は四肢や体幹などの皮下組織や筋肉などに発生し,悪性軟部腫瘍とも呼ばれる.日本国内における軟部肉腫の新規患者数は年間約1,500例と報告されているが，いずれの疾患も全がん患者に対する割合は1%以下であり,年間発生率が10万人あたり6例未満とされる希少がんに該当する.したがって各疾患の患者数は少ないことから大規模な臨床試験を実施することが難しく，エビデンスの構築が乏しい腫瘍でもある.軟部肉腫は一般的に有効な薬物治療の開発が進んでおらず，治療は手術での完全切除が基本となる.その中でも,Ewing肉腫や横紋筋肉腫など特異的な薬物療法が確立された肉腫，脂肪肉腫や平滑筋肉腫など非特異的ではあるものの治療戦略がある肉腫,有効な薬物療法が未だ開発できていない肉腫の3つに大まかに分類される.本稿では，軟部肉腫に対する免疫療法ならびに分子標的治療について概説する.