ドライバー遺伝子を対象とした新しい治療薬:6)NRG1

摘要

ヒトゲノムは4つのニューレグリン遗伝子〔neuregulin (NRG) 1-NRG4〕をコードしており，それらのメッセンジャー ribonucleic acid(RNA)を選択的スプライシングすることにより，少なくとも異なる20のニューレグリンアイソフオームが存在する.NRG1は，epidermal growth factor receptor(EGFR)ファミリーに作用するニューレグリンファミリーの一つであり，ヒトではNRG1遺伝子によってコードされる細胞間接着分子である.NRG1の融合遺伝子は稀ではあるが，固形がんの中で約0.4%に認められることが報告されており，非小細胞肺がん（non-small-cell lung cancer ; NSCLC)以外に胆のうがん，膵がん，卵巣がん，乳がん，肉腫，腎細胞がん，膀胱がん，大腸がんなどで確認されている.近年では，このNRG1遺伝子の融合変異のドライバー遺伝子変異としての可能性とその治療戦略に脚光が集まっている.本稿では，NRG1遺伝子融合肺がんに対する役割と今後の治療戦略に関して解説していく.