食料、農業、農村基本問題調査会答申

摘要

今後の世界の食料需給については、次のような背景から、短期的には価格変動の不安定さが増すとともに、中長期的にはひっ迫する可能性があると考えられる。 ①世界の人口が急激に増加し、また所得の向上によって食生活が高度化するため、食料需要は開発途上国を中心に大幅に増加する。 とりわけアジアの諸国は食料需要の大幅な増加により、穀物等農産物の輸入を増やす傾向にあり、その結果、食料自給率が低下してきている。 ②今後農用地を大幅に拡大することは望めず、環境問題が顕在化するなど、農業生産の拡大を図る上で種々の制約要因が明らかになってきている。 ③輸出国が特定の国に偏る傾向が強まるとともに、主要輸出国は過剰在庫に伴う財政負担の増加や農産物価格の低迷に苦しんだ過去の経験から∴農産物の在庫水準を圧縮させてきている。 また、エルニーニョ現象等による異常気象により、農業生産の変動が今後も生じる可能性がある。世界の食料需給の動向は、我が国の食料供給の確保に大きな影響を及ぼすものであり、その短期的動向の敏速な把握や中長期的な見通しの検証を絶えず的確に行っていく必要がある。