4) がん患者における血栓塞栓症

摘要

がん患者の救急疾患の1つに血栓塞栓症がある.がんと血栓との密接な関連は古くから知られており,歴史的には1823年のBouillaurdが報告したフィブリン血栓による静脈閉塞による下腿浮腫や，1865年にTrousseauが報告した胃がん患者に併発した遊走性血栓性静脈炎まで遡ることができる.がん関連血栓塞栓症(cancer-associated thrombosis ； CAT)はがん患者の増加，ならびにその予後の改善により発症頻度が増しており,稀ならず遭遇する重要な疾患である.本稿では，がん関連VTEを中心として，その疫学，病態生理，診断，予防，治療，今後の課題について順々に整理していきたい.