がん免疫療法にかかわる環境 因子1)腸肝軸を介した腸内細菌関連 因子による肝がん微小環境の抗腫瘍免疫制御

摘要

近年，次世代シーケンサーの発達により，さま ざまな疾患における腸内細菌叢が盛んに研究さ れている.がん分野においても，腸内細菌叢が 発がんやがん抑制に関係することが示唆されてい る.筆者らは腸内細菌叢が産生する代謝物質が 腸から吸収され，ほとんどがまずは肝臓に到達す ることに注目し，この「腸肝軸」を介する腸内細 菌叢やその関連物質の肝がん微小環境に対する 作用について研究してきた.肝臓は肝実質細胞 だけでなく，胆管上皮細胞や，門脈血が流れ込む 類洞を裏打ちする特殊な血管内皮細胞である肝 類洞内皮細胞，そしてその肝類洞内皮細胞と肝 実質細胞との間のディッセ腔と呼ばれるスペース に存在する肝星細胞が存在している.また，類 洞に常在するとされるクッパー細胞と呼ばれるマ クロファージゃ，さまざまな免疫細胞も存在し，肝臓の恒常性維持のために機能している（図1).