石油鉱業連盟創設60周年に寄せて

摘要

かつては「油主炭従」という言葉をよく耳にしたものである。1960年代の初頭より，我が国エネルギー供給の大宗が石炭から石油に替り始めたエネルギー転換の流れを指した言葉だ。自由化政策の下で，安価な中東原油が大量に輸入され始め，その経済合理性がそれまでの「炭主油従」を駆逐したのであるが，爾後，我が国が迪った経済成長の軌跡を振り返ると，この転換は歴史の必然であった。そして，石油鉱業連盟の創設もこの必然の一部であった。爾来，60年が経過した今，脱炭素というエネルギー全般を包摂したパラダイムシフトを歴史が要求し始めている。石油開発にあっても，地球市民の一人として，また，エネルギー供給を担う立場から，歴史に突きつけられた宿題と真正面から向き合うことが求められている。而も，2050年までにネットゼロカーボン目標を達成するにあたって，石油·天然ガス資源を抜きにしては至難の技とするのが，大方の実務家の見方だ。石油·天然ガスの供給者たる石油開発にとって，採掘，供給，消費の上流から下流に至る全工程を視野に収めながら，脱炭素の道を拓くことがす不可避な状況にあると言える。脱炭素社会への移行にあたり，石油開発は却って重い責任を負っているのである。石油開発が新しい大義を打ち立てた暁にこそ，それが必然だったと歴史は語るであろう。