今回,第53回目を迎えた「河口湖心臓討論会」の世話人をさせていただき,誠に光栄であるとともに身の引き締まる思いであった.今回のテ—マは,「心筋代謝のリモデリングと心不全」で,心筋エネルギー代謝の観点から心不全の病態を解明する研究を討論した.心臓は1日に5kgものATPを消費する臓器で,この大量のATPの95%は,ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によって産生される.2007年,NeubauerがN Engl J Medの総説の中で,心不全を「An Engine Out of Fuel」と記載したように,心不全の基本的な病態はエネルギ_産生と消費のプロセスの異常と言える.ジギタリスと利尿薬に始まる心不全治療の歴史は,ACE阻害薬,ARB,遮断薬,そしてミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)と確固たるエビデンスとともに進歩してきたが,心筋エネルギー代謝を標的とする治療はいまだ実現していない.心筋ではダイナミックな基質の選択が発生段階および心負荷時に起こることが知られているが,この変化が代償機構なのか否かについては今も議論がある.
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