真空槽内で加熱しているアルカリハライドの表面温度測定

摘要

我々は電子線照射により，刺激脱離を起こすアルカリハライド表面の原子脱離収量と表面形状変化を調べている。電子線照射により，試料表面下で形成された欠陥が最表面に達し，表面原子が脱離する。これらの欠陥の拡散や脱離過程を定量的に調べるためには，電子線照射時の試料表面の温度を正確に知る必要がある。しかし，表面温度を正確に測定するのは一般に困難で，試料の材質や環境に応じて最も適当な測定方式，温度計を選定する必要がある。我々は，実用的におおよその表面温度を知ることができる簡便な手法を検討した。アルカリハライドの刺激脱離の研究を背景としているため，試料としてKBrを用い，誤差の幅として5K以内をめざした。真空中での表面温度測定には放射温度計が有効であることも多いが，KBrは赤外線の透過率が高く，温度計の補正が困難であるため，今回の測定では取り扱いが容易な熱電対を使用した。熱電対を用いて表面温度を測定する場合，厚さが薄く，放射率が試料とできるだけ等しい貼り付け材を用いて熱電対を試料と密着させて固定する必要がある。今回は，貼り付け材の替わりに試料と同じKBr（小片）を用い，特別なペーストの充填は行なわなかった。