今回は,オーバサンプリングを用いる△-∑(デルタ·シグマ)変調技術について解説する.△-∑変調はCMOS回路に向いた方式で,1980年代後半から盛んに使われるようになった.電話音声,オーディオに始まり,最近では精密計測や電力メータ,無線通信などにも応用されている.ここでは△-∑変調器の動作原理,および構成例について説明する.今まで述べてきたA-DコンバータとD-Aコンバータは,アナログ量の瞬時値をバイナリ表現のディジタル値に1対1で対応させるものでした.このようなコンバータをナイキストレートコンバータ(Nyquist rate data converter)と呼びます.これに対して,今回紹介するオーバサンプリング技術は,アナログ信号と,バイナリ表現のデータの並びで表現されたディジタル信号の間を,少ないビット数(通常は1ビットの符号列)でインターフェースする技術です.少ないビット数で表現する代わりに,本来のナイキスト周波数よりはるかに高い周波数でサンプリングを行います.そのため,「オーバサンプリング」と呼ばれます.
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