先天代謝異常症診断へのメタボローム解析の適用一研究用途から臨床検査へ一【抄録】

摘要

メタボローム解析は基礎研究の分野ではもちろんのこと、近年では臨床現場においても診断や治療効果の判定?予測などに利用の範囲が拡大している。一方、小児科領 域の中でも小さな領域である先天代謝異常症分野においては、早くから研究や診断にメタボローム解析が利用されており、メタボローム解析法の進歩と一致するように、次々と新しい疾患が発見され、それらの臨床像が研究されてきた。先天代謝異常症は体内における代謝に関わる酵素や輸送蛋白などが先天的に欠損することにより正常な代謝が障害されることによって様々な症状を来す疾患の総称である。1950?1960年台にかけてアミノ酸分析が可能になったことでメープルシロップ尿症やフェニルケトン尿症などのアミノ酸代謝異常症や尿素サイクル異 常症の発見や研究が進んだ。その後、1970年台を中心にガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)を用いた尿中有機酸分析によって有機酸代謝異常症、1990年台になるとタンデム型質量分析計(MS/MS)を用いたアシルカルニチン分析法の開発により脂肪酸代謝異常症などが臨床の場において簡単に生化学診断されるようになり、治療法などの研究も進歩してきた。