メタボリック症候群と尿路上皮がん

摘要

メタボリック症候群が社会的に認知されてから久しいわが国では“メタボ体型”や“メタボ検診”などのワードは日常会話でも使用されている.何となく“太っている人が陥りがちな体に悪そうな状態”を一括りに表現する上で便利な用語である.メタボリック症候群と泌尿器疾患のかかわりを考える上では,先ほどのイメージに治えば尿路結石や勃起不全が容易に想起される.しかし,近年，泌尿器がんの発生や腫瘍学的転帰にメタボリック症候群が関与しているとの報告を目にする機会が増えてくると,本病態の本質的なことを理解せずに泌尿器科医を続けることに多少の後ろめたさを筆者は感じている.前立腺がんや腎細胞がんの発生，腫瘍学的転帰にメタボリック症候群にかかわることはすでに多くの論文で述べられている.尿路上皮がんは住血吸虫や喫煙など,すでに有力な発がん因子が同定されていることから，メタボリック症候群への言及は少ないが,尿路上皮がんの発生リスクや腫瘍学的転帰に悪影響を及ぼすとの報告は少なくない.本稿ではメタボリック症候群と尿路上皮がんとのかかわりについての過去の報告をサマライズすることに注力した.今後，この分野の研究を行う若い先生のスタートアップにお役に立てればと考えている.