Focal therapyの日欧米における臨床的位置づけ?臨床試験の動向

摘要

近年,先進諸国におけるがん罹患者数において前立腺がんは上位を占める.わが国においても,2020年に更新された“全国がん登録による全国がん罹患デーダ’では,2017年の前立腺がん罹 患者数は91,215人と，男性のがん罹患者数で第 1位となった. 限局性前立腺がんに対する標準治療は，前立腺および精囊の外科的切除，および前立腺に対する放射線治療であるが，その男性機 能への影響は少ないとはいえず,機能温存による生活の質を保持する治療法の確立が期待されている.このような状況において,前立腺がんのうち予後に影響しやすいと考えられる“臨床的に意義のあるがん(significant cancer)"の診断において,multi-parametric magnetic resonance imaging (mpMRI)の有用性が示されたこと，さらには高密度焦点式超音波療法，凍結療法，および小線源療法などの前立腺内部の部分治療を可能とするモダリティーの技術革新は，がんのみを 治療する一方,可能な限り正常組織を温存することで機能温存と生活の質の保持を目指すfocal therapyという新たな治療戦略を可能とした.本稿では,focal therapyの日欧米における臨床的位置づけ，および臨床試験の動向について示す.