橋梁免震のパイオニア(山あげ大橋)

摘要

今や標準的耐震技術の一つとなった橋梁免震の出発点が，1986年度に国土開発技術センターに設けられた「免震装置を有する道路橋の耐震設計研究委員会」である.ニュージーランドで始まっていた技術を強震大国日本に適用するにあたり，建設省土木研究所川島一彦耐震研究室長(以下所属·肩書はすべて当時)の強力なリーダーシップのもと，設計·施工，ソフト·ハード，様々な技術開発が行われた.そのハード面の成果の一つが高減衰ゴム支承(以下，HDR)という我が国独自のデバイスであった.積(層)ゴム構造だけで支承機能に地震時の水平力調整とエネルギー吸収機能を併せ持つHDRは，コンパクトで信頼性の高い装置として期待された.委員会の成果は「道路橋の免震設計法ガイドライン(案)」(1989年3月)としてまとめられた.山あげ大橋はこのガイドラインを実橋に適用するいわゆる免震5橋試験施工の一つであった.