「床版取替え工事における既設橋梁の3次元出来形計測」を読んで

摘要

本稿では，コンクリート床版取替え工事において供用中の橋梁の出来形寸法を精度よく取得する手法として，LS搭載の把持式ロボットを用いた路下を対象とする3次元出来形計測について紹介されており，私も床版取替え工事に携わった経験があることと，デジタルトランスフォーメーションの推進に注目していたため，非常に興味深く拝見させていただいた.床版取替え工事が盛んに行われている中で，供用中の既設橋梁の出来形寸法は設計や施工計画の検討に必要でありながら，50年経過した橋梁は詳細な図面の不足や経年により変形していることが多く，改めて測量する必要がほとんどである.路下の計測にあたっては3Dレーザースキャナによって地表面から計測を行うことが多いが，状況によって地表面からの計測が行えず，施工用足場の設置が必要となる.その場合，全体の工期を圧迫してしまう.そのため，施工用足場を必要としない計測用ロボットは合理的に感じた.主桁フランジの形状や橋梁を通過する車両による交通振動といった問題や，計測精度についても改善がなされており，本システムは幅広く対応が可能と考えられる.日本の橋梁の供用を鑑みると，床版取替え工事はますます増える一方である.それに伴い，ェ期および交通規制の短縮は緊急の課題と言える.本手法がより発展し，全国の現場において一般的に広く普及することで，日本の交通インフラの維持に活躍するよう，期待したい.