内水面漁業·遊漁制度の日英比較研究からの示唆

摘要

筆者は1998-99年度、旧文部省の科学研究費補助による共同研究「内水面漁業協同組合の環境保全機能」において、環境経済学の観点から、内水面の漁業·遊漁制度をめぐる議論と現状の課題群を分析した。 そして暫定的な結論として、現行制度の変革オプションを二つ提起した。まず、①内水面漁業協同組合（以下、漁協と略す）による漁場管理体制の維持を前提とし、現行の「増殖放流主義」から産卵·生育場の環境修復による「生物多様性復元主義」へと脱却すべきであるとした。 次に、②現状の漁協と競合し、その機能を代位して、流域の生物多様性の復元を担う組織の行政的育成、という選択肢を示した。 しかしながら、以上に代わる第3の選択肢の可能性を、わが国と同様に内水面の漁業·遊漁に伝統があり、同じく近代的制度が整備されている英国に求める研究の必要性を痛感した。そのため2004年度から本(2006)年度まで、文部科学省の科学研究費補助により、英国における内水面漁業·遊漁制度の研究に取り組んだ。 本稿は、大海原宏、福井県立大学名誉教授の薦めにより、その成果の一部を中間報告として、まとめたものである。