溶射処理：溶射技術の概要と防錆·防食溶射の実際

摘要

溶射法は、燃焼炎、電気アーク、プラズマジェットなどの熱源を用いて金属、セラミックス、サーメットなどの材料を加熱溶融した微粒末状の融体として被処理体表面に吹き付けて皮膜を形成させる表面処理技術であり、1910年スイスで発明された技術である。 発明当初から1955年代にプラズマ熱源が実用化されるまでの約50年間における溶射の用途は、もっぱらブロンズによる石膏細工などの美術工芸品の金属装飾、Zn、Alによる鋼構造物の防錆、防食、硬質金属による摩耗、磨滅した機械構造部材の肉盛補修および耐摩耗性付与などの限定された工業分野にとどまり、現在のような表面処理技術の一翼を担う存在ではなかった。 その後、溶射熱源の高速度化、高エネルギー化に加え、設備および最新の粉末冶金技術による溶射材料の開発、適切な作業標準と品質管理の設定などによって、皮膜の信頼は着実に向上してきた。 さらに、溶射法は、先端産業の要求に応えて開発された各種のファインセラミックスや新金属材料が保有する高度な諸機能を成膜化できる有力な手段として認識され、現在では機能皮膜製品の開発技術としての研究が精力的に行われている。 ここでは、溶射法の種類と特徴、成膜機構を要約した後、実用化例として、自然環境下で使用されている鋼構造物の防錆防食溶射および高温環境下の用途例としてボイラ伝熱管に対する防食溶射の実状について紹介する。