来年度は発電量17％増，利用率82％今年度は前年割れ，利用率は70％弱

摘要

いつの聞にか，新年度の原子力発電量を予想する時期が果てしまった。 発電所のいわゆるトラブル隠しが発覚，東京電力のプラント17基が点検停止を余儀なくされたのは平成14年秋のことであった。 東電のBRW（沸騰水型軽水炉）で発生したシュラウド（炉心隔壁）と再循環系配管のひび割れ問題は，全国のBWRプラントに波及，検査のため予定外の長期運転停止に追い込まれるプラントが続出した。 トラブル隠し以前の13年11月に発生した中部電力·浜岡1号（BWR）での余熱除去系配管の破断事故などの後遺症も続いていたため，14年度下期の発電所設備利用率は62．5％へ落ちた。 上期は84．2％の高水準にあったため，14年度平均では73.4％と70％台は維持した。 しかし，15年度では59．7％へ続落した。 発電所の稼働率はその後徐々に回復するが，16年8月に起きた関西電力·美浜3号（PWR，加圧水型軽水炉）での二次系配管破断による死傷事故，17年8月に発生し，東北電力·女川発電所を全面停止させた宮城沖地震，18年6月に最新鋭機で発生したタービン翼の破損事故など，回復を妨げる要因が発生したため，依然として回復途上にある。16年度の利用率は68.9％にとどまり，17年度でようやく71．9％と70％台を取り戻したが，今年度は再び70％を割り込む可能性がある。 7年度から13年度まで続いていた80％台には程遠い水準だ。配管の減肉や部品の劣化にみられる老朽化現象をはじめ，運転管理の不徹底など，重大なトラブルではなくても定期検査を長期化させる問題が続出していることが，その背景にある。 とはいえ，今年度のもたつきは来年度の回復につながる。記者が試算した来年度の発電量は3，560億kWhで，今年度見込みを17％（520億kWh）も上回る。 設備利用率は81．8％と一気に80％の大台を回復する。再び発覚した過去のトラブル隠しが，稼働状態に影響しなければ，という条件が必要になってはいるが。