自動車用高潤滑有機複合被覆鋼板の開発

摘要

亜鉛系めっき鋼板の表面にクロメート処理層を有し、さらにその上層に厚さ約1μmの薄膜の有機皮膜を有する有機複合被覆鋼板は、代表的な自動車用防錆鋼板として、広く適用されてきた。 今回、自動車用防錆鋼板の成形性向上を目的として、有機複合被覆鋼板の薄膜有機被覆層に高度な潤滑性を付与することにより、自動車用高潤滑有機複合被覆鋼板を開発した。 各種潤滑剤の検討結果から、潤滑機構の異なる2種類の潤滑剤、特にPEとPTFEを併用した場合に相乗効果が認められ、摺動特性が顕著に向上することが判った。 自動車用高潤滑有機複合被覆鋼板は、従来材と比較して、材質グレードに換算すると、1～1.5グレードの成形性向上効果を有していることが、実部品スケールの金型を使用し、確認された。 自動車用高潤滑有機複合被覆鋼板は、絞りビード部のような高面圧条件における摩擦係数が低いばかりで無く、パンチ面のような低面圧条件における摩擦係数が特に低く、パンチ面における歪の分散により、しわの発生が抑制され、成型可能範囲が拡大したものと考えられた。