EB硬化型塗装の現状

摘要

電子線(EB)のエネルギーを利用した塗装膜の硬化技術は、1960年代に米国を中心に始められ、日本では1970年代に開始された。 EB硬化には、様々な特徴があるが、その利用範囲はPCM鋼板や意匠タイルなどの利用に限られてきた。 印刷分野においても、ポリプロピレンシートへの印刷インキの硬化にEBが利用されたが、その後利用の拡大は報じられていない。EB硬化技術が広範囲に拡大しなかった理由は、一つには塗料自身が熱硬化型などに代表される既存技術からの大幅な変更が必要であること、第二にEB硬化装置が一般的で無いため、常に特別視されてきたことによる。 さらに日本における溶剤排出規制が欧州などに比べ緩やかであるため、EB硬化の特徴の一つである環境対応性が十分生かされず、使用者の導入意欲が弱いことも理由として挙げられる。しかしながら、揮発性有機溶剤(VOC)を懸念する傾向が拡大しており、さらにシックハウス症候群対策の有効な対策としてEB硬化型塗装が注目されてきている。 本稿では、紫外線(UV)技術との比較も交え、EB硬化型塗装の現状について報告する。