蓄積搬送型エネルギー流通方式における劣通信環境を考慮した中継経路制御法

摘要

近年の相次ぐ災害で改めて認識されたように，災害時の迅速なライフラインの復旧は，安心·安全な社会の実現に向けた最優先課題の一つである．特に電力供給が途切れると，被災地の市民生活や避難所生活，医療機関に多大な支障が生じ，経済も大きな打撃を受けるため，これまでの災害においては電力は比較的すみやかに復旧されてはいる．しかし可能な限り，停電期間を短縮することが必要である．震災など大規模広域災害時において電力系統が断絶したとしても，住宅公共施設·マイクログリッドなど様々な場所に備えられた発電·蓄電設備は損傷を免れている可能性が高い．また，道路網も寸断はあってもすべての道路区間が通行不可能になることはない．そこで，損傷を免れた発電·蓄電設備と，電気自動車（EV）·プラグインハイブリッド自動車（PHV）のような蓄電·発電機能を有する移動体を組み合わせ，配電網を使わずに電力の蓄積搬送による電力需給のマッチングを図る方式が，これまで著者らによって提案された．これは，災害直後のエネルギー供給の緊急的な代替手段として有効と考えられる．本稿では，災害直後のエネルギー供給代替手段の実現を目的とし，各移動体が走行しながら通行不能箇所情報などを収集しつつ，移動体同士がすれ違った時に保持している情報を共有する蓄積搬送型通信と本方式を組み合わせた手法を提案し，シミュレーションにより有効性を検証する．