大学における建築音響教育の現状と課題－教育データMEDAc2001の紹介

摘要

我が国の建築教育は，欧米とは違って（一部の芸術系大学の建築学科を除けば）建築計画，建築構造，建築環境·設備に大別される分野をすべて包括した教育（いわゆるホーリスティックな建築教育）が行われており，建築音響は建築環境·設備系の一部として教育されている。ところが，建築学科の学生の大半は建築デザインや設計を志望して入学してくる。 つまり，建築学科に入学してくるはとhどの学生は音響への興味や関心がないと言っても過言ではない。 一方，近年，人々の居住環境性能への要求は高まる傾向にあり，たとえばマンションの床衝撃音の問題に代表されるように，建築音響技術の必要性はますます増大しており，建築環境·設備の教育の重要性も高まっていると考えられる。筆者は，大学の工学部建築学科を卒業して35年，大学の教員として建築音響に関する講義を担当する立場になって30年になる。 本稿では，そうした経験から，2001年に構築した建築音響に関する教育データMEDAc2001を紹介しながら，大学における建築音響教育の現状と課題について考えてみたい。