軽水炉の確率論的安全評価(PSA)入門：第5回 内的事象レベル2PSA

摘要

連載講座「軽水炉の確率論的安全評価入門」の第5回目は，内的事象レベル2PSAである。 レベル2PSAは，第3回の内的事象レベル1PSAで紹介した炉心損傷に至る事故シーケンスの種類と頻度から，多量の放射性物質が環境に放出される事故シーケンスの種類と頻度，それらのソースタームを評価する。事故シーケンスとは，これまでの講座の解説のとおり，起因事象，事故緩和操作の成功·失敗の組合せで決まる事故のシナリオのことである。 また，ソースタームは，事故時に，環境へ放出される放射性物質の種類，性状，放出量，放出時期，放出継続期間および放出エネルギの総称である。 原子炉施設の安全性を確率論的安全評価の手法で評価したWASH-1400報告以来，レベル2PSAは過酷事故（シビアアクシデント）の研究と一体で進歩した。 現在，レベル2PSAの研究は，シビアアクシデントの国際協力研究の進捗およびコンピュータによる数値解析技術の著しい進歩によって，WASH-1400報告およびその後の米国NRCのNUREG-1150報告当時と比べて，飛躍的に進展した。 本稿では，これらの経緯を含めて，レベル2PSAの現状を紹介する。