R744/R32/R1234ze(E)混合冷媒を用いたヒートポンプサイクルの性能評価

摘要

地球温暖化が深刻化している現在，家庭用·業務用エアコンの冷媒として広く用いられているR410Aは地球温暖化係数（GWP）が高く，指定フロンとして規制されつつあるため，代替冷媒の開発が急務である．そのような中で近年，オゾン層破壊係数（ODP）が0で，かつGWPが低い自然冷媒が注目されているが，R410A相当の成績係数（COP）が得られる家庭用·業務用エアコンに適した自然冷媒はまだ見つかっていない．このような状況で，著者らのグループ[1]，[2]はマグネシウム合金の鋳造時に用いるカバーガスとして開発され，ODPが0で，かつGWPが10以下であるR1234ze(E)と既存の冷媒の中で比較的GWPが低いR32とを混合した2成分混合冷媒がR410Aの代替冷媒として使用できるかどうかをドロップイン試験により確認した．その結果，R32の組成比が50mass%以上の場合にはR410Aと同等以上の性能が得られる可能性を明らかにした．しかしながら，R32の組成比が50mass%以下ではR410Aに比して体積能力が不足するという結果を得た．そこで本研究では，体積能力を維持したまま，冷媒のGWPの低減を図るために，第3成分にGWPが1で，比較的体積能力の大きいR744を加えた3成分混合冷媒R744/R32/R1234ze(E)を提案し，そのサイクル性能の評価を行った．具体的には，R410A用蒸気圧縮式ヒートポンプシステムを用いて，R410A(GWP=2088)，R32(GWP=675)，R32/R1234ze(E)(50/50mass%)(GWP=341)およびR744/R32/R1234ze(E)(4/43/53mass%)(GWP=293)の暖房を想定した条件でのサイクル実験を行った．なお，参考までに，試験冷媒中で非共沸性の強いR32/R1234ze(E)(50/50mass%)およびR744/R32/R1234ze(E)(4/43/53mass%)の露点と沸点の温度差，すなわち温度すべりをFig.1に示す．