日本の漁業発達史(52): ＜漁場開拓＞

摘要

寛永十四年（一六三七年）、紀州大崎村（現、和歌山現下津町）の田広与次兵衛が現在の神奈川児足柄下郡真鶴町にボラ綱を持参し、尻掛浜で漁を続け、子孫が代々この地に定住したという。 一説によると、真鶴町における与次兵衛のボラ網は、カ治年間（一六五八～六一年）の創始で、毎年一月から六月まで滞在して漁業を営み、漁期が過ぎれば帰国していたという。このボラ網は七〇～八〇人の漁夫を要する大綱で、これ以後、近世を通じて紀州漁民の出漁が続いたとされる。 同じ沿岸の四般張網漁も紀州漁民の出漁であった。