フッ素に富む国，モンゴル：オンゴナイトを訪ねて

摘要

横綱「朝青龍」に代表されるモンゴル力士の活躍で，モンゴルは私達にとって非常に身近な存在となってきているが，私にとってのモンゴルの第一印象は，本誌の記事で知った多産するほたる石鉱床の記載から「フッ素に富む国」であり，それは昭和50年代のことであった。 これは私達の先輩である岸本文男氏が独学でロシア語を勉強されて，当時得難かった社会主義国の鉱物資源情報を翻訳され，本誌に纏められたものの一環であった（岸本，1982；1983），同氏によるとモンゴルにおけるほたる石鉱床の発見は，対独戦争の必要性から急接近した旧ソ連の技術協力で鉱物資源探査と開発を進めた成果の第1号で，旧ソ連の製鉄業を支えた，と書かれている。モンゴルのほたる石生産量は，例えば1985年には78.7万トンである。 我が国のほたる石生産量は1938－69年の歴代生産量を合わせた全生産量で27.3万トンであるから，モンゴルが如何にフッ素に富hでいるかが解るであろう。 ほたる石は現在でも活発に採掘されている（高橋，2004）。