峡谷内大気汚染現象の拡散支配パラメータの検討

摘要

数10km{sup}2のスケールの気象·大気汚染の研究は，地形や土地利用の違いによる地表面の加熱·冷却の影響を強く受け，地域固有の現象を形成するため，関東地方，関西地方，中部地方など例えば多くの地域で同様な観測と数値計算が実施されている．しかし，労力·費用の観点から密な観測や立体的な観測は困難であり，数値モデルの精度を検証するにはなかなか至っていない。 もう一つのアプローチとして，水槽実験を用いて数10km{sup}2 のスケールの現象解析についての研究がいくつか実施されている．Mitsumoto，Ueoa，近藤は，水槽実験を用いて海陸風の現象解析を実施している．Chenは水槽実験を用いて山谷風に関する研究を実施している．両方の実験とも，大気とみなした水槽底面の温度を変化させ温度差による浮力によって現象を模擬するものである．この水槽実験の困難さは，実際の現象を支配する無次元パラメータをどのように定義するかである．Uedaは無次元化した数値モデルを線形化し，海陸風を支配する速度と長さは，グラスホフ数とプラントル数の関数で表されると報告している．Chenは水槽実験の結果から，日中は山の高さと混合層高さの比，夜間は冷気高さと山の高さの比が山谷風の大気安定度の特徴的な無次元パラメータであると報告している．このことは峡谷内では移流の影響が小さく，鉛直構造は長さの無次元パラメータだけで決定されることを示唆している．