ナノ粒子と分散技術：ナノ粒子の高度分散を目指した押出機，混練機の開発動向

摘要

近年，多様化する樹脂材料のニーズに対応するため，より一層の樹脂材料の高機能化が求められている．その中でも樹脂材料と無機の微粒子（以下フィラーと略す）とのコンポジット化は，剛性等の力学特性，熱的特性，光学特性，電気的特性，化学特性等を制御することが可能なため，これまで様々なコンポジットが製造されてきた．また，最近では，生産環境改善のためにあらかじめ粉体を高濃度に含有したマスターバッチのニーズや，フィラーのサイズがナノメーターオーダーであるナノコンポジットの製造のニーズが高まってきている．特にナノコンポジットについては，フィラーの添加量を大幅に減らすことが可能となるだけではなく，従来では得られなかった新たな特性を発現することが期待できるため，高度に分散させる技術ならびにそれを実現するための装置の確立へのニーズが大きい．しかし，ナノサイズのフィラー（以下ナノフィラーと略す）は，粒子サイズが1～100nmと小さく，その表面積の大きさから凝集力が非常に大きいため，従来のスクリュによる混合·混練技術のみではナノフィラーを均一に分散させた複合材料を得ることは難しい．このため，ナノフィラーを樹脂に高度に分散させるためには，フィラーの表面改質処理，樹脂の改質および相容化促進技術をはじめとした材料面からのアブローチと，改質処理されたフィラーを変質（劣化）·凝集させることなく効率良く均一分散させるための装置面からのアプローチが必要であると考えられる．本報では，ナノ粒子を分散させた樹脂の特性と用途を交えながら，主にクレイ系のナノ粒子を高度に分散させる技術および装置の動向について報告する．