適塾で養生訓をまなぶ

摘要

高分子は当然のごとく生き物ではない．しかし自己組織化と言う観点で高分子を研究していると，あたかも生き物のような振る舞いを見せることに気が付く．一定の枠に押し込めるのではなく，ある程度の自由度あるいは動機を与えて，その伸びたい方向に伸ばしてやる方が面白い結果になる．話はずれるが，緒方洪庵が幕末に開いた私塾の名前を適塾と言う．これは緒方洪庵の号の通々斎から来ており，司馬遼太郎によれば，「おのれの心に適（かな）うところを楽しむ」心境を意味する，と言うこと．らしい．すると我々のテーマは，「高分子の特性に適合して，物性を引き出す」と言うところであろうか．また福岡といえば，養生訓を著した貝原益軒が有名である．彼の根本思想は，とにかく長生きをして人生を楽しもう，に集約される．高分子もある役割を担うためにこの世に現れてきたからには，できるだけ長くこの世に留まり，その役目を果たすことが大事だと思われる．