HTLV-1関連脊髄症(HAM)の分子病態に基づく治療戦略

摘要

ヒ卜Tリンパ向性ウィルス1型(HTLV-1)の感染 者の一部に発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)は， 進行性の脊髄性麻痺を特徴とする，極めて深刻な難 治性希少疾患である。HAMの治療はステロイドゃィ ンタ一フエロン-alphaが主に使用されているが，これらは 効果不十分かつ副作用で継続困難な場合が多く，より 効果や長期忍容性に優れた新規治療薬開発が必要であ る。HAMの主病態は，活性化したHTLV-1感染細胞 によって惹起される脊髄の慢性炎症と，その結果生じ る神経組織の不可逆的な損傷と考えられており，感染 細胞や炎症を制御する治療薬の開発が必要である。本 稿では，主病因である感染細胞に対する特異的な治療 標的分子の解明，脊髄病巣での持続的炎症機構や予後 関連バイオマーカ一などの研究成果を踏まえ，分子レ ベルでの病態に即した根本的治療薬開発の現状や今後 の展望について概説する。